5000系

5000系

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▲山麓線・上高地線共通仕様としてデザインされた5000系。現在上高地線は2連3本、山麓線は2連5本・4連10本を使用している。

概要

 富士アルプス特急は体裁上は大手民鉄を名乗っているものの、あくまでも客単価の高い新幹線がそれなりに稼いでいるのであって、2路線ある在来線のうち、山麓線はかろうじて輸送密度10,000人を越えているものの、上高地線の輸送実績は芳しくない。
 そのため上高地線の設備改善は遅れ気味で、21世紀になっても吊りかけ車をだましだまし走らせている有様であった。口の悪い鉄道マニアは「上高地線の電車がきっと、大手民鉄最後の吊り掛け車両になるだろう」などと囁くほどであった。
 そんな状況を富士アルプス特急としてもよしとしているわけではないので、さし当たって「非冷房の吊り掛け車」3編成をすべて置き換えるべく2004年に企画・製造したのが5000系電車だ。
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▲2004年までつりかけ車が残っていた上高地線の体質改善に投入されたはずの5000系だが、最初の3本が新村に配属された以外はすべて山麓線への配置となっている。

車体

 富士アルプス特急には山麓線と上高地線というふたつの在来線(と連絡線)があるが、山麓線は通勤輸送がそれなりに旺盛なので20m4ドア車、上高地線は在来からの中古車がメインだったので18m級の2~3ドア車が主に使われていた。
 しかし、山麓線と上高地線で車両規格を統一すれば予備車の確保や保守面でのメリットが大きいため、上高地線と山麓線の共通仕様も念頭にデザインが進められた。共通仕様は3000系で散々煮え湯を飲まされたと思うのだが、あれから20年が過ぎて技術も変わった。そのため当時は不可能だったことが今度こそ可能になるという目算もあった。
 車体は山麓線規格の20m4ドアとなり、車体幅も2,900mmになって収容力を拡大。車体は日車ブロック工法による標準車体を採用している。なお、上高地線はワンマン運転を行なうため、運転室後部に収納式の運賃箱と選択開扉が可能なドアスイッチを設けている。
 車内はオーソドックスな、バケットタイプのロングシート。観光路線ということでクロスシートの導入も検討されたが、新村~新島々間が最大2両つなぎでしか運用できないため、ハイシーズンの観光客輸送を2両つなぎ/20分ヘッドで行なうことを考えた場合、収容力が劣るクロスシートの導入は見合わせざるを得なかった。
 5000系のうち2015年に造られた2編成は、富士山口よりのモ5000形が貫通扉つきとなっており異彩を放っている。これは5090型や3090型を増結するために措置で、通常はこの運転台が前面に出ることはない。
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▲貫通型となった5000系の第9・10編成(右)。ただし通常は中間に封じ込められており、先頭に出る機会はほとんどない。

走行装置

 走行装置は山麓線の40‰勾配を1コントカットで走れる性能を持たせるため、2両つなぎで1.5M0.5Tを基準に選定された。2両つなぎでは先頭車は運転台に最も近い車軸がT軸となり、そのほかはM軸、4両つなぎの場合は両先頭車の運転台に最も近い台車がT台車となり、のこりをM台車としている。
 これは、T軸に速度計を設置する関係で、下り勾配でできる限り精度の高い速度検知を行なうためとしている。また、先頭の車軸はレールの汚れを拾うため、トルクを安定させるためにはあえてT軸とすることがよいという研究結果に基づいている。
 モータは東洋電機製のTDK-6175A。コントローラも東洋電機製2レベルIGBTインバータでATR-H3175-RG(2両つなぎ)/ATRD-H6175-RG(4両つなぎ)となる。型番からもわかるように4両つなぎは6M1C構成であり、mc+Mで1ユニット×2コント、2両つなぎは3M1C×2コントで編成を組む。これは山麓線で1コント不動でも最低限の起動を保証するため、1編成あたり2コントの構成をとる必要があるためだ。また、4両つなぎのみ型番がATRDとなっているのはブレーキが回生/発電ブレンディングとなっているためだ。40‰下り勾配での回生失効は運転に支障を与える危険があるため、発電用のブレーキチョッパと抵抗器を装備している。
 TDK-6175Aは出力175kw(1150V・122A・107Hz・3155rpm)。これをギアリング7.07(92:13)で駆動する。この極端な高回転モータを極端なギアリングで回すところからも、勾配線での走行安定性を第一に考えていることがわかる。上高地線向けの車両ながら、実質山麓線仕様と言っても過言ではない。
 このようなピーキーな性能なので、最高速度こそ110km/hだが加速力は4.0km/h/sをフリーラン領域の54km/hまで引っ張ることが可能となっている。しかし上高地線においてはこのような高加速性能は不要なので、電流を67Aにカットして54km/hまでの加速力を2.6km/h/sとしている。最高速度85km/hの上高地線であればこれでも十分だ。
 一方山麓線では本来の性能で走行するが、最高速度は65km/hとはいえ1コントカットで40‰起動をするには、このくらいの性能が必要だ。一方でJR中央本線に高尾まで乗り入れる際に100km/h連続走行が必要となるため、こういった特性になることはご理解いただけるかと思う。
 台車は軸梁式のボルスタレス台車。富士アルプス特急の在来線では初採用となった。これまで40‰勾配での座屈現象を懸念しブルスタつき台車を採用し続けてきたが、JR東日本が201系から車両を置き換える際、次期新車はボルスタレス台車を採用する意向が示された。そこでJR東日本211系を使用して試運転を行なった結果、山麓線での試験の結果走行に問題ないことがわかったため5000系でもボルスタレス台車の採用が決まった。

運用

 5000系は2両つなぎが8本、4両つなぎが10本製造され、2両つなぎは3本が上高地線、5本が山麓線に配置、4両つなぎはすべて山麓線の所属となっている。このうち山麓線所属車両は大月からJR中央本線に直通し、高尾まで乗り入れるため、ATS-Pを装備している。
 今後5000系を増備するかは未定だが、3000系の足回りがかなり老朽化しているため、近々何らかの手が下されることは間違いないだろう。
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▲山麓線は4両つなぎと2両つなぎを配置。組み合わせて4~6両を組んで活躍する。

5090型

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▲快速〈あかふじ〉として走る5090型。先代3090型のイメージを残しつつ、現代的な装いを付加したスタイルとなっている。

概要

 2015年に〈パノラマ富士〉置き換え用に登場した座席指定車両で、モ5090+モ5140の2両つなぎ。車体はアルミボディのダブルスキン構造で外側t1.6、内側t2.3をt1.5のトラスで結んでいる。またモ5090形は〈パノラマ富士〉譲りの展望車となっている。
 座席は回転リクライニングシートが1,000mmピッチで並び、連結面には便所・洗面台が用意されている。
 足周りは基本的に5000系と同一だが、制御器は1C6MのATR-H6175-RGをモ5140形に搭載。6m1Cの2両1コントとなっている。これは基本的に5090型は5000系と組んで運用されるため、5090型単体で2コントにする必要性がないためだ。
 また、コンプレッサは5000系のMBUスクロールコンプレッサではなく、発生品のHB-2000を流用しているなど、若干仕様が異なっている。
 5090型に増結される5000系は現在のところ5090型と同時に竣工した5009・5010編成に限定されている。これは、5090型を連結する際に編成を貫通する必要があるためで、モ5009・モ5010に限って貫通扉を設置している。
 なお、5010編成は3090型のモ3190+モ3240を実質半固定編成を組んでいるため、5090型と組むのは5009編成でほぼ固定されている。

運用

 5090型は5009編成と組んで主にシーズン中運行される快速〈あかふじ〉に運用されるほか、朝の大月行きに限って快速Bとして運行される。5090型は2両1編成しかないため、検査時は全車自由席の快速Aとして運行される。このときの車両は5000系だけでなく3100系なども使われる。
 なお、5090型はATS-Pを装備していないため、JR線への直通はできない。全般検査で竜王工場に回送する際は、5000系を先頭にして回送することになっている。

  • 最終更新:2017-03-28 23:42:55

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